「鍵」(1959)のカギは意外や北林谷栄だった!/ 今では老衰をエージングと言う。

 

谷崎の原作よりいやらしくない。

思うに当時の大映、松竹は名作揃い。東宝東映は娯楽が主?。

北林谷栄(1911~2010)

↓上手な絵、ネットより

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↓シネマAさんの論評

 市川崑監督が昭和三十年代につくった一連の文芸映画には駄作や凡作がひとつもない。これは驚くべきことです。『炎上』『野火』『おとうと』『破戒』などと挙げていくと、いかに気力が充実していた時期であったかがわかるというもの。『鍵』もまた必見の秀作。

 谷崎潤一郎の原作小説はくりかえし映画化されていますが、まず第一に観るべき作品はこれ。ただし、忠実な映画化とはいえません。原作も面白いので、読んでおくとさらに愉しめますよ。中公文庫版は棟方志功の芸術的でエロい挿画つきなので、特におすすめ。

 見どころは、第一に、宮川一夫キャメラマンの名人芸ですね。
 捨てカットがないどころか、すべてのカットが、構図といい、色調といい、照明といい、入念に考え抜かれています。ストップモーションの使用もお手本。何回観ても勉強になります。日本映画が世界に誇る職人技。宮川はモノクロも絶品ですが、カラー撮影でも達人ですね。

 第二に、完璧にちかい配役。
 二代目中村鴈治郎(中村玉緒のパパ)の名演。老人の心理が顔にあらわれている。道をヒョコヒョコ歩いてる姿がすでに凄い。当時まだ五十代。それから、京マチ子と叶順子の母娘も好演です。ふたりの眉のかたちの対照に注目。美人女優の叶にあえてコンプレックスをもった不細工な娘を演じさせる、という着想の妙。北林谷栄のお手伝いのお婆さんもみごと。じつは四十代だったそうなんですけど。
 ちょっと不満が残るのは仲代達矢かなあ。やたらと眼を剥いて、俗にいう〈仲代歌舞伎〉を演じてしまっています。名優は自分の芸に酔ってはいけませんね。映画は舞台劇じゃないんだから。

 第三に、芥川也寸志(芥川龍之介の二男)の音楽。抑制がきいていて、ちょっと前衛的な不思議な旋律を聞かせてくれます。これは渋いです。聴きどころというべきかもね。

 本作が海外で高く評価されているのは当然だ、とおもいます。

 叶順子(1936~)

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青字は画像を近々アップ致します。